馬夫食(うまぶじき)
どんな伝承か
飼い馬に与える食べ物をウマノモノといい、これを馬夫食と呼ぶ。土間の向こうのマヤにいる馬は、家族が炉端で茶を飲んだり食事を始めたりすると、鼻を鳴らし足掻きをしてねだる。もらえなければ首を振り、マヤの中を歩き回り、後ろ脚で壁を蹴る癖のつく馬もいた。馬は世話をしてくれる人の足音を聞き分けて嬉しそうに啼いて迎えるが、同じ家の者でも世話をしない人には、そばに来ても素知らぬ顔をする。そのため馬を飼う家では、いつも馬の喜びそうなものに気を配らねばならなかった。飯島町の宮下家に伝わる年中行事式法にも、馬夫食の項がある。
原典より
いつも自分をみてくれる人の足音をちゃんと聞きわけているのであって、同じ家の人でも、自分をみてくれない人など、いくら傍へきても一向に知らん顔している。—— 伊那 1958年1月号(地方誌・郷土史資料・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
伊那 1958年1月号(地方誌・郷土史資料・1958年(昭和33年))
『伊那 1958年1月号』は、伊那谷の郷土の雑誌『伊那』の一号の一部である。平沢清人の「ぬけ参りとお札降り」を中心に、江戸時代の抜け参りを詠んだ「御影参り百人一首」の抄出と、慶応三年十一月に虎岩村の五兵衛方へ札が降ったときの祝儀の品と祭礼の買物の記録を載せる。前後には、祭りの芸能を記した記事の末尾と、向山雅重が飼い馬の餌を記した「馬夫食」の冒頭が残る。