激痛の果てに現れた女の仏
どんな伝承か
一九四三年一月、札幌市のT・Jさんは職場のスキー大会の帰りに焼酎を飲みながら札幌桑園駅から列車に乗り、ほてりを冷まそうとデッキへ出て足を滑らせ転落した。荷物が引っかかって引きずられ、頭や顎、足、背骨に大けがを負って鉄道病院で手術を受けた。三日目の夜、痛みで眠れずにいると、視界が砂嵐のような模様から暗闇に変わり、無数の光の粒が飛び交った末に一筋の光が美しい女の仏の姿となって微笑んだ。仏が消えて眠り込むと翌朝には激痛がうそのように引き、十日ほどで退院できた。無信仰だった彼は、以来仏の存在を信じるようになったという。
原典より
そのうちの一本の強い光の線が次第に太くなって眼前にきたかと思うと、それが、それはそれは美しい仏様になって私の前でにっこりほほえんで立っておられました。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。