巡礼の霊
どんな伝承か
京都から戻った著者は伊勢の松坂に招かれ、ある夏、土地の文化人堀内鶴雄の趣向で、町外れの海会寺という気味の悪い寺で怪談会を開いた。明治初年に悪僧了玄が強盗や殺人を重ねた寺で、近くの林の道では昔巡礼の親子が殺され、住民が常夜燈を立てて霊を慰めていた。度胸試しで一人闇の小径を進んだ著者は、蛇の枕と呼ばれる古沼の常夜燈のあたりで機を織るような音を聞き、水から上がってきたような冷たい手に襟首をつかまれて逃げ帰った。続いて入った質屋の主人も同じ音を聞き、五番目の男は肩を棒で打たれて丸い打ち身ができていた。
原典より
そのとたん冷たいものがいきなりムズとぼくの襟首をうしろからひっつかまえた。—— 霊界五十年(長田幹彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。