地震のない揺れが続いた鶴間荘
どんな伝承か
昭和五十一年六月、東京都立川市高松町三丁目の木造アパート鶴間荘で、一階の二室だけが激しく揺れる怪事が起きた。一日の午後八時、子を寝かしつけていた主婦の部屋で箪笥がきしみ、電灯が縦に揺れ、窓ガラスが鳴りだした。隣の家主宅は静まり返り、駆けつけた警察官の前でも揺れたが、どこにも地震は起きていなかった。揺れは六日、八日、九日の朝と計四回続き、壁がきしんでもコップの水はこぼれなかった。市の公害課も調べたが原因はつかめず、地下に埋めた戦時中の防空壕の祟りを口にする者もあったという。
原典より
「空間が振動していた。それも断続的に二時間近く」と現場検証に立ち合った警察官は地震説を否定していた。—— 妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年))
『妖怪の民俗学――日本の見えない空間』は、宮田登が一九八五年(昭和六十年)に著した、妖怪の現れる場所を論じた民俗学の書である。柳田国男と井上円了の妖怪論、幽霊と妖怪の違い、口裂け女と産女、皿屋敷、化物屋敷と下女、辻・橋・境の怪異、怪光と怪音、七不思議、通り悪魔と髪切りを、古文献や新聞記事、各地の伝承から読み解く。四章から成り、都市の空間に妖怪が現れる仕組みを軸に据える。