平家ナロの七人塚と刀の蛇
どんな伝承か
北川の久井谷を奥へさかのぼると、山中に思いがけず平らな土地が開け、真ん中にこんもりと茂った森がある。村人が平家ナロと呼ぶ所で、そこに七人塚という塚がある。落ちのびてきた平家の落人七人がここで飢え死にし、見つけた人が石を積んで葬ったものという。塚に埋められていた刀を北川の新田家の先祖が見つけて持ち帰ると、大蛇が後を追ってきて自在鉤から舞い降りた。刀を返せという意味だと悟って元に戻し、事なきを得た。『郡誌』も、塚の宝を三匹の蛇が守り、刀を持ち帰った農夫の家の自在鉤に蛇が現れたと伝えている。
原典より
平家の落人が七人落ちて来て、ここで飢えて死んだのを葬った塚である。—— 阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪
『阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪』は、阿波の木頭地方の民俗誌のうち、「八、伝説・妖怪」の節と、阿波の太布を論じた一篇を収めたものである。前半は北川・折宇・蟬谷などの平家落人の話、平家の皿泉、カマ(滝壺)の大蛇、山爺やアセゴノマン、フルソマ、怪火、狐、隣の槙山村の塚の伝説を、『郡誌』の記事と古老の話から述べる。後半は太布に関する文献を挙げ、祖谷と木頭での聞き書きと製品の調査から原料・製法・道具を記す。