皺を塗りつけたと伝える榎と玉手箱
どんな伝承か
浦島村へ立ち寄り、浦島明神に参って納経した折の記録である。社前には皺のある榎があり、以前の木は枯れて今は若木になっていた。皺榎とは、浦島太郎が竜界から戻って八千年を経てもなお十七、八の童のようであったが、竜宮でもらった玉手箱を開けたところ、八千年ぶんの皺が箱に入っていて、その皺をこの榎に塗りつけたのだという。それゆえ木の肌には皺のような皮膚がある。太郎が釣り糸を垂れ、亀に乗って竜界へ渡ったのは、社から一里東の下本庄という海辺だとされる。社には玉手箱と伝える箱があり、長さ一尺三、四寸、高さ五寸、幅八寸ほどで、かぶせ蓋を打紐で結んであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。