馬を病ませた蟻通の神と貫之の歌
どんな伝承か
紀の国へ下って都へ帰る道中、紀貫之の馬が急に死にそうなほど苦しみだした。通りかかった人が立ち止まり、ここにおいでの神のなさることだろう、長らく社もしるしもないが霊験あらたかな神で、これまでも同じように苦しむ者が出た土地だから祈願なさいと告げた。幣も持たぬ貫之はどうしようもなく、ただ手を洗って跪き、神がおられるらしい方角へ向かって何の神かと尋ねた。ありとほしの神と申すと聞いて歌を詠み奉ったところ、そのおかげか馬の具合は治ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。