蜘蛛血石と藤の森のカタメダケ
どんな伝承か
紀伊の白岩谷は紀の川の南岸、岩手の里の外れにあたり、大きな石が数多く転がっている。石はどれも血の色に赤い。もとは真白だったが、土蜘蛛が棲んで人を取ったため、その血に穢されて色が変わったのだという。谷の東の峰には四方五六尋の岩穴があり、深さを知る者がない。里の人はこれらを蜘蛛血石と呼ぶ。人々が力を尽くしても土蜘蛛は退治できなかったが、通りかかった田村将軍に村民が害を訴えると、将軍は矢を作るカタメダケを求めて貴志川をさかのぼり猿川村に至った。竹は一本もなく旧家東氏の方に逗留したが、ある夜の夢で丸栖村の川辺に竹があると知り、翌朝藤の森へ行くと水中に竹を見つけ、弓矢を作って土蜘蛛を退治したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。