龍が去って涸れた池に湧いた飛泉
どんな伝承か
大師御行状集記は龍泉寺の草創をこう記す。本願の大臣が伽藍を建てる勝地を求めたが、この所は古くから池があり、悪龍が山内の池辺に棲んで人畜を寄せつけず害をなしていた。大臣は冠帯を着け、瞬きもせずに七日七夜、池の底を見つめた。すると龍王が人の形を現した。大臣が猛利の心をもって誓願を発すると、龍は仏法には勝てぬと言って他所へ移り、もとの形に復して去った。その後、池は涸れて山内の水は乏しくなり、伽藍を建てても水流は十余里の彼方となって僧が住みがたくなった。そこで大師が一所を点じて加持祈誓すると、龍が慈心をもって帰り来たり、たちまち飛泉が湧き出て絶えなかった。よって龍泉寺と名を改めたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。