勢陽雜記が記す銭掛松の由来
どんな伝承か
『勢陽雜記』は、銭掛松は高野尾村の東、豊国野の街道の辺りに立つ一本の松だと記す。由来を尋ねると近郷ではこう語るという。昔、遠国から伊勢参宮に来た者がこの辺りの茶屋で休み、宇治山田までどれほどかと主人に尋ねた。主人は十日通る豊国野、七日通る長縄手、三日渡る三渡りと答えたので、路銀に乏しい参宮人は、信心のほどは神も受けてくださろうと言い、わずかな賽銭を松の枝に掛けて伏し拝み帰った。あとで茶屋の主人がその銭を取ろうとするとたちまち蛇に変じ、恐ろしさに住みづらくなって迷い歩き、狂人となった。参宮人は翌年ふたたび訪れ、賽銭がそのまま残るのを見て参宮を遂げたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。