心鏡寺の竜灯松と海から来る灯火
どんな伝承か
備中誌窪屋郡巻の伝えるところによる。亀休山心鏡寺の竜灯松は寺内にあり、これも小町が植え置いた松だという。毎年七月の八日と十六日には、昔から絶えることなく海中から灯火が来て松にかかった。書き手は幼いころ古老から、老人が目のあたりに見たと聞いたが、いつしか絶えていまはその事もない。おまけにこの松も文政年中に枯れ失せてしまった。竜灯は備中に限らず諸国の里人の話にも載る。越前敦賀の常宮の庭にも正月元日の夜に灯火が松にかかり、越中新川郡の眼目山の禅寺では毎年七月十三日の夜、庭の松の梢に立山の絶頂から飛び来る山灯と、海中から来る竜灯が上るという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。