香林寺境内に残る通幻誕生の榎
どんな伝承か
通幻禅師が墓の中で生まれたという旧跡は、今の香林寺の境内にある。門を入って右手に大きな榎があり、これがその墓だという。昔ここには自得庵という草庵があった。元享のころ、この辺りに池渕長者という永沢氏がいて、一人娘が同じ郡の細川村の太郎麻呂と通じ、月満ちながら産むことができずに死んだ。その亡骸を庵のかたわらに葬った翌日、遍歴の僧が通りかかり、新しい塔婆に回向していると、墓の中からかすかに子の泣く声がする。施主に告げて墓を開かせると、母は死んだまま男の子を産み落としていた。長者は驚き喜んでその子を連れ帰り、僧は仏縁だと乞い受けて弟子とした。これがのちの通幻和尚だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。