天井から下りる大足の足洗い屋敷
どんな伝承か
寛永の末頃、のちの旧安田邸の地には旗本の小宮山左膳が住んでいた。左膳はある日、置いてけ堀のあたりで若者たちが捕らえた狸を、銭を与えて逃がしてやった。その夜、女の姿で現れた狸は、身近に悪い者がいるから用心せよと告げて消えた。やがて妾のおさわと密通していた良之助が、左膳を向島の土手で闇討ちにする。子の膳一は狸が引き出した手紙で陰謀を知り、寝ていた二人に斬りかかったが追い詰められた。その刹那、天井から毛むくじゃらの大足が下りて二人を押し潰した。以来その部屋では血だらけの大足が下りて足を洗えと叫び、洗ってやると引っ込んだので、足洗い屋敷と呼ばれ本所七不思議の一つに数えられたという。
原典より
夫れ以来此の室に寝ると、血だらけな大足が天井から下って来て足洗ひゝと叫ぶ。—— 江戸傳説(佐藤隆三) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。