牛久沼の街灯に寄り来る青白い人魂
どんな伝承か
十年ほど前の梅雨どき、筆者は一人で茨城県の牛久沼へバス釣りに出かけた。釣りを終えて、車の鍵を沼に落としたと気づき、先輩に合鍵を届けてもらうことにして、日の暮れたボート屋の駐車場で待った。霧雨の中、離れた街灯のあたりに青白い光がいくつも揺れ始める。やがてその一つがまっすぐ近づいて二メートル先で止まり、百五十センチほどの炎に膨らんで、中からおかっぱ頭に着物姿の三十センチほどの女の子が現れた。逃げる途中の看板には、髪を振り乱した女の顔だけが青白く浮かんでいた。迎えに来た先輩は、すぐ近くでお通夜をしていたと言った。以来、筆者はたびたび幽霊を見るようになったという。
原典より
そして、その青白い炎の中から、おかっぱ頭で着物を着た日本人形のような30㎝くらいの女の子が出て来た。—— 水辺の怪談3(水辺の怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談3(水辺の怪談)
『水辺の怪談3』は、釣り人が海や川、湖で出遭った怪異を、多くは体験者自身の筆で綴った実話怪談集である。東京湾の夜の一本釣り、男女群島の瀬泊まり、サイパン、北海道の夕張岳、利根川の利根大堰、大井川上流の支流などでの出来事を二十編収め、「海の章」と「川・湖の章」の二部に分ける。前半の十二編には、冒頭に書き手の居住地や釣りの経歴を記した短い紹介が付く。