猪苗代湖で天神の怒りを言われた抜け参り
どんな伝承か
大正十五年ごろのこと。猪苗代湖をはさんで、湖南の村の鎮守は藤原時平を、湖北の小平潟天神は菅原道真を祭神とする。湖北の天神の夏祭りは会津地方や中通りからの参詣で賑わったが、湖南の村から行くと天神が後ろを向くので学問の願いは叶わないといわれていた。それでも行きたい小学六年生たちは夜明け前に二十キロの湖岸道を抜け参りした。帰りは足に豆ができて汽船に乗ったが、小平潟港を出て湖心にかかると一天にわかに曇り、波が高くうねり出した。船乗りは船室に来て、この中に館の子めらが乗っているな、天神様が怒っている、船が沈んでも知らぬぞと散々に叱りつけたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。