薬師堂の霊験で生まれた薬師町
どんな伝承か
高知県土佐市戸波の薬師堂は、明治の初め頃、四国巡礼中の足の悪い遍路がここで祈願を込めると数日で足が立ったという霊験で知られるようになり、参詣人が四方から集まって薬師町という門前町ができるほど繁盛した。旅館や物売る店、演戲小屋までできたというが、明治二十年頃、博徒同士の遺恨から薬師堂で通夜をしていた別人が誤って殺される事件が起こると、参詣人はぱたりと途絶え、薬師町はそのまま衰微してしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が書いた怪談・奇談の短編集である。著者が「私の村」と呼ぶ土佐の海村の迷信を語る「鷲」のほか、高岡郡や長岡郡、野根山など土佐の話を多く含み、越中の放生津や立山、銚子の利根川口、京の寺町、摂津の味泥、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の妖術を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人や土地の人から聞いた話として語る篇もある。