巫女ヶ奈路の岩に現れた幻
どんな伝承か
伝蔵は雨催いの晩、日浦坂を上って池の近くを通りかかると『来な、来な』と呼ぶ声を聞き、道を変えて日浦坂と虚空蔵山の間の坂を越えた。越えた先の巫女ヶ奈路という窪地まで来ると、大きな岩の上に十二単の官女が現れ、それが甲冑の武人に変わり、金色に輝く宮殿になり、不動明王のような仏像へと次々に姿を変えた。最後に十二畳敷ほどもある大きな蟹が現れ、その背にお種が腰かけているのが見えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が書いた怪談・奇談の短編集である。著者が「私の村」と呼ぶ土佐の海村の迷信を語る「鷲」のほか、高岡郡や長岡郡、野根山など土佐の話を多く含み、越中の放生津や立山、銚子の利根川口、京の寺町、摂津の味泥、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の妖術を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人や土地の人から聞いた話として語る篇もある。