一家がばらばらになる地蔵
どんな伝承か
京王線の線路が見えるあたり、明大前駅の近くの入り組んだ路地を抜けて大きく曲がった所に、一体の地蔵が立っている。頭はおにぎりのような形で、顔も何も刻まれておらず、眺めるほどに気味が悪い。近所で由来を尋ねても誰も知らず、事情に通じていそうな隠居のもとへ案内された。隠居によれば、これはかつて「バラバラの神」と呼ばれたもので、今ではほとんど忘れられているという。昔その場所に住む家は決まって一家離散したが、地蔵を建ててからはそれがやんだと伝わる。顔のないおにぎり型の頭は、建てた当初からの姿だったという。
原典より
バラバラとは、この地蔵の立っている所は、昔、一家が必ずバラバラになってしまうので、地蔵をたてたところ、そうでなくなったという。—— 怪異雑考5-東京妖異所の系譜(高橋敏弘・西郊民俗) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考5-東京妖異所の系譜(高橋敏弘・西郊民俗)
『怪異雑考5-東京妖異所の系譜』は、高橋敏弘が書いた連載「怪異雑考」の第五回で、『西郊民俗』第一二八号に載った小論である。渋谷の道祖神、駒形の狸の狛犬、泉岳寺駅の異変、四谷図書館の地下室、銀座・日比谷間の地下道の怪、明大前の顔のない地蔵、経堂の怪猫屋敷など、東京の街なかの怪異の場所を、筆者が訪ねて宮司や近所の人に聞いた話や新聞記事をもとに記す。七つの短い項に見出しを立てて並べ、祟りを鎮めるために祀られた神や地蔵のいわれを書きとめる。