盗まれ位牌下に戻った財布の金
どんな伝承か
叔母が急死して十日ほどすると、さまざまな怪異が起きた。まず甲府に住む中学生の安治が汽車に轢かれて死に、次に著者が鍵をかけたスーツケースに入れて片時も離さなかった財布が、中身の五十円ごと消えた。土地の慣わしで湯殿山の老行者に占ってもらうと、昨夜六十四、五の老婆が東から忍び込んで盗んでいったという。四、五日後、ふさ子の家では奥座敷で物音が続き、家探しをすると仏壇の戸が開いて蝋燭が転がり出ており、叔母の位牌の下に十円札五枚が置いてあった。札の番号も、著者が癖で重ねた折り方の順もそのままだった。
原典より
ところが変なことには仏壇の戸が開けひろげられて、蠟燭が三つも四つもころげだし、おばさんの位牌の下には十円さつが五枚四つに折ったままおいてあった。—— 霊界五十年(長田幹彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。