羽黒山伏の十界の荒行
どんな伝承か
修験者の法力がどのように体得されるものかを、羽黒山の山伏の四季の行を例に述べた条。山に籠るのは仏身を成就するためであり、母の胎内に生を託し、仏果を得て娑婆に還るまでは山を降りないとされる。十界の初めの地獄では、重い笈を背負って険しい山道を駆けめぐり、唐辛子と毒だみ草を火にくべた煙にいぶされながら経を読み、貝をつないだ紐で両手を縛られて秤にかけられ、分銅がわりの不動石より重ければ罪障が深いとして懺悔を課される。食事は一日二食で、塩湯の鏡汁と大金剛と呼ぶ沢庵二切れだけであったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、暮らしの奥に秘められた信仰や伝承を扱った全集『日本人物語』の一巻である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使いと犬神落とし、生霊、隠れキリシタンや隠し念仏などを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。