無見の鐘と呼ばれた語源の説
どんな伝承か
『煙霞綺談』が記す一条である。慶長年間より前、百姓や町人は金銀を目にすることさえ稀であった。田舎の寺院も鐘を鋳て撞楼を立てることはなかったが、この寺にはたまたま鐘ができ、高い山の上なので三里五里先まで鳴り響いた。子どもが不思議がって父母に尋ねると、あれは今まで見たこともない鐘というものだと答える。それを聞いた子どもが当て字混じりに無見の鐘と覚えたのだろうという。また金銀銅鉄も鉦も鑑もみな「かね」と読むので、銭も同じ「かね」だからその響きで金銭が湧き出るように思い、いつしか富貴になると言いならわしたのだろうと説く。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。