鐘を埋めて観音堂を建てた行脚僧
どんな伝承か
『嶽南史』第一巻が伝える一条である。その昔、遠江国菊河の東に黄道という仙人がいた。大願を発して洪鐘を一つ鋳させ、淡ヶ岳の絶頂に掛けたまま行方をくらましたという。その後、この鐘を撞けば世界の財宝がたちまち集まり、思いのままに富貴になれるという噂が立った。人々はこれを信じ、ひそかに撞きに行く者が多かったが、撞くこともできぬまま深い谷底へ落ち、生きながら無間地獄の苦しみを受ける者が出たので、世に無間鐘と呼ばれた。やがて行脚僧が来て、掛けておけばどれほど人を損なうか分からないと山頂に穴を掘って鐘を埋め、上に草堂を建てて観音の像を安置した。これが今の観音堂だと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。