母が松明で呼び歩いた勘五郎火
どんな伝承か
橋爪村に一人の老母がおり、その子を勘五郎といった。ある夏の夜、田に水を引くことで勘五郎は他人と口論になり、ついに相手方に鍬で打ち殺されてしまう。母は狂気のあまり、毎夜松明をともして水田のあたりを勘五郎、勘五郎と呼びながら尋ね歩いた。その霊魂は後年まで残り、夏の夜には田圃に妖しい火が見えるのだという。のちに犬山の徳授寺の和尚がその魂魄を弔ったところ、妖火も見えなくなったと『愛知県丹羽郡誌』は伝えている。この火を土地では勘五郎火と呼んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。