てまり歌が伝える恋野の中将姫
どんな伝承か
恋野には古くから中将姫の言い伝えがあり、紀伊の川上大和の境と歌い出すてまり歌が残されている。人も通わぬ深山の奥に隠れ住む姫が母を恋しがって野へ出ると、雲雀が天まで昇っていき、父の朝臣が迎えに来たけれども、姫は覚悟を決めて当麻の寺で髪を落とし比丘尼になった、と歌は結ぶ。土地には姫が住まわれたという中将倉、そこへ通い詰めた糸の細道、去年川に架かる糸の滝、南方の雲雀山、布経の松といった名が伝わり、恋野という地名も、母恋し恋しの野辺やと姫が歌ったことに始まるとも伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。