西備名区が記す盤台寺の縁起
どんな伝承か
『西備名区』巻十九は海潮山盤台寺を記す。寺は阿伏兎にあり、阿伏兎山とも阿浮図観音ともいう。本尊の石仏観世音は海中にあったものが漁網に掛かって上がったもので、天正年間、中国の将であった毛利輝元が創建し、開基は覚叟建智和尚だという。寛文七年八月には水野勝種が海岸に石を積み、方丈から閣上まで回廊を建てた。大風や地震にも損じないという。朝鮮の信使が来るときには餉米や菓子紙墨を献ずる例があり、西国の諸侯は上り帆のたびに参堂または代参した。東西を行き交う船からの遙拝の賽銭は、波に連れて堂下の石岸まで至るという。起こりは天正の初め、鞆の南の江の浦に住む網の翁が熊野権現の夢告で三山の姓を授かり、阿伏兎の沖で網に二尺の観世音石像を得たことにあると伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。