熱海旅館での遠藤周作と三浦朱門の同時体験
どんな伝承か
十一月の終わり、遠藤周作と三浦朱門は伊豆へ小旅行に出かけ、三浦の思いつきで熱海で汽車を降りた。駅から坂をのぼった先の、竹藪に囲まれた待合風の小さな宿に泊まり、母屋から離れた部屋に床を取った。夜半、遠藤は胸を締めつけられる苦しさとともに、耳元で「ここで首をつった」と訴えるかすれ声を三度聞いた。同じころ三浦は、遠藤の夜具の裾に、うなだれた後ろ向きの人影を二度見ていた。起き出して話し合うと二人の体験が符合したため、恐ろしくなって部屋を飛び出し、女中を起こして部屋を替えてもらった。後に、そこは昔役者の別荘だったと分かったという。
原典より
その時私は彼の夜具の足許に人がいるのに気がついた。—— あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。