座間駅と座摩神社の同時体験
どんな伝承か
御殿場の本屋で田中河内介の本を買った徳川夢声は、帰京の汽車の中でそれを読み始め、松田で小田急に乗り換えてからも読み続けた。河内介と養子が船の上で斬られ、親子の亡骸が小豆島に流れ着いて葬られ、のちに座摩神社という社になったというくだりに差しかかり、そのページに座摩神社の写真が載っていた。ふと小田急に座間という駅があったと思い当たって窓の外を見ると、ちょうど座間駅を通過したところで、夢声は文字どおり寒気を覚えた。三百二十ページほどの本のちょうどその箇所を読んでいた偶然を、夢声は霊の働きと考えたという。
原典より
小田急に座間というところがあったな、まさか今走っているところが座間じゃあるまいなと思って、窓の外を見たら、スット座間駅を通過したところでしたよ。—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。