十二社の跡に立つさい銭箱の老婆
どんな伝承か
かつて横浜の名所だった本牧のチャブ屋街は戦後すっかり姿を消し、十二社の社も失われて、跡地には油のタンクが据えられ、異国風の風景に変わってしまった。その社のあった場所に、外国人の家で働くメードたちの宿舎がある。小雨の降る夜更け、何人かのメードが、かつてさい銭箱があったあたりにぼんやりと老婆が立っているのを見て肝をつぶしたという。さい銭箱はある老婆が預かっていたはずで、社も箱も老婆も消えた今も姿を見せるのは、さい銭への執念なのかもしれないと筆者は記している。
原典より
雨がショボショボ降る晩、夜中に何人かのメードさんが十二社のお社のさい銭箱のあったあたりに、ぼんやりと立っている老婆の姿を見てキモをつぶしたという話なのだ。—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。