母の財布を盗み横浜へ逃走
どんな伝承か
盗癖のある十六歳の少年山田辰雄(仮名)は、催眠状態で著者に盗みの次第を打ち明けた。母親はがま口を布団の下に敷いて寝る習慣だったが、ある夜、少年は寝たふりをして母が便所に立った隙にそれをつかんで外へ飛び出した。夜明けを待って横浜へ行き、飲食店で朝食をとって波止場や公園を見物し、昼ごろ電車で浅草へ引き返して活動写真館を見て回り、宿に一人で泊まった。翌朝もまた横浜へ出かけ、浅草で十二階や花屋敷を見物した晩、宿帳を調べに来た刑事に見とがめられて警察署へ連れて行かれ、翌朝母親に引き渡されたという。
原典より
さうして夜の明けるのを待兼ねて横濱へ出かけた。—— 變態心理と犯罪(中村古峽) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。