浦島さまの池での怪人遭遇
どんな伝承か
著者が数年前に現地で聞いた話。大正十一年二月、静岡県三島町の十二三歳の子が、学校へ行くと家を出たまま行方不明になり、三日目に三島町から約二里離れた箱根の山中宿でうろついているところを郵便配達夫に見つけられた。子の話では、町外れの浦島さまと呼ばれる所にある小さな池の前まで来ると、見慣れない山が現れ、背の高い男が出てきて面白い所へ連れて行くと誘った。男は大きな金の草鞋を履き、金の火箸で餅を焼いてくれたという。帰ったとき、二日前におろした下駄は草履のようにすり減っていた。
原典より
やがてその山の中から背の高い男が一人出て来て、面白い處へ伴れて行つてやるから来いと云つた。—— 變態心理と犯罪(中村古峽) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。