五條天神で壷に入った少年寅吉
どんな伝承か
下谷池之端に住む庄吉の弟、寅吉は七歳のころ、卜筮を習いたいと願って断られ、鬱々と日を送っていた。ある日、いまの上野公園にあたる東山のかたわら、五條天神の近くで遊んでいると、老人が小さな壷から薬を出して売っている。日が暮れると老人は敷物も葛籠も次々に壷へ押し込み、最後は自分も中へ入って、壷ごと空へ舞い上がって消えた。翌日も同じことが起こり、三日目に老人は寅吉を手招きし、菓子でつって壷へ入れてしまう。気づけば常陸の山頂だった。老人は岩間山の天狗で、以後二年にわたり寅吉は天文や呪法、九字の作法を授かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。