玉沢の火葬と日金の堂守の種明かし
どんな伝承か
日金越で大入道と少女の影に出会った朝比奈弥太郎は、夜更けに麓の玉沢へ下りた。丘の中腹で村人が火を焚いているので尋ねると、半田様の娘の亡骸を火葬したところで、娘は十七歳だという。朝比奈は、山で会った娘は亡魂で、鉄棒の大入道は地獄の鬼だと言い、村人も親が因業だから娘が地獄に落ちたのだろうと念仏を唱えた。この噂は伊豆・相模・駿河に広まった。のちに日金地獄に参った旅人が堂守にその話をすると、堂守は腹を抱えて笑った。あれは帰りの遅い自分の娘を棒を持って迎えに出た自分で、娘が朝比奈とすれ違った直後に狼に襲われて叫んだので、駆けつけて狼を打ち殺したのだという。
原典より
「仏があって、それを火葬にしたところでございます」—— 日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。