田端の座敷に立った女の子
どんな伝承か
大正三年六月七日の午前二時ごろ、東京府田端のF氏の家でのことという。その晩は駒込の知人が泊まっていた。夜中にふと目を覚ますと、部屋の真ん中に子どもが一人立っている。こんな夜更けにと不審に思い、見直してもやはりそこにいる。気味が悪くなり、そのまま布団をかぶって明け方まで寝たという。翌朝早く、近所の田村家から、昨夜二時ごろに幼い娘が亡くなったと知らせが来た。その子は三つで、日ごろからこの家へ遊びに来ていたが、急性の脳症で死んだのだった。
原典より
* 死出の暇を乞ふ幽靈* 失戀青年の幽靈* 目にうつる學生服* 自殺して愛人の枕元* 親友の幻影* 従兄の水死を見る* 三歳の女兒が見た父の靈—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。