写真に写った三つの霊
どんな伝承か
東京市深川区富川町三十一番地の中村三蔵は神習教の信者だった。身内の久吉を葬ったのち、神式の霊祭を営み、位牌を床の間に安置していた。九日ほどたって、他家へ嫁いだ娘のらく子が里を訪れ、持参した写真機で父の三蔵と弟、妹の高津くらを写した。自宅で現像すると、らく子の背後に頭陀袋を掛けた久吉の姿があり、床の間の箱に半身をもたせかけた白襟紋付の婦人と、三蔵と弟の間に老女の顔まで写っていた。白襟の女は三十六で死んだ母、白髪の老女は六十五で世を去った者かと推された。
原典より
東京市深川區富川町三十一番地中村三藏は神習教の信者であつた。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。