見えぬ客(春菊の霊現象)
どんな伝承か
ある秋の夜更け、著者は芝居帰りに芸妓の小政と花香を連れて円山の料亭松島で鯛めしを食べた。帰りぎわ、頼んだ折詰めは三人分のはずが四人分あり、女中は座敷を移るたびに四人分の座布団を敷いていた。女中は、青っぽい振袖の舞妓がうつむいて廊下を渡るのを確かに見たと言い、下駄も四人分あったと青ざめたが、玄関には二人分しかなかった。死んだ春菊を思い出した一行が置屋の吉蔦へ戻ると、深夜に便所へ立った市菊が廊下で白いものを見て倒れ、著者も廊下の奥で手を振る普段着の舞妓の姿を見た。声をかけると姿は消えた。
原典より
ひょいとみると廊下の奥のところに誰れかが立っている。—— 霊界五十年(長田幹彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。