遊泳禁止の用水池で裂けたふくらはぎ
どんな伝承か
昭和三年ごろ、小学六年生だった夏の午後のことである。仲間数人と連れ立って、田んぼの中にある用水池へ泳ぎに行った。そこはもともと泳ぐことが禁じられていて、遊んでいるところを見つかれば叱られる場所だったので、こっそり泳いでいた。すると、どういうわけか右足のふくらはぎが急に痛みだした。慌てて岸に上がって見ると、五センチほど肉が切れて口を開けていたが、不思議なことに血は出ていなかった。手当てをどうしたかは覚えていないという。柏崎市半田の男性が自ら語った体験である。
原典より
驚いて陸にあがって右足を見ると、五㎝程肉が切れて口が開いていた。—— かまいたち談義(大竹信雄・高志路1998年8月号) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
かまいたち談義(大竹信雄・高志路1998年8月号)
『かまいたち談義』は、大竹信雄がかまいたちについて論じた民俗学の論考である。北蒲原郡笹神村と柏崎市・刈羽郡小国町で集めた、かまいたちにかかった体験九例を挙げ、辞書や『北越奇談』などの説明から構え太刀説・つむじ風説・真空説・筋肉の急な動きによる生理現象説を整理する。「はじめに」から「おわりに」まで六節に分け、体験例の共通点から境界性を論じ、妖怪かまいたちの性格と、『東遊記』や『北越奇談』に見える越後七不思議との関わりを考える。