題目と井戸水で病を癒す法華経寺
どんな伝承か
千葉県にある日蓮宗の正中山法華経寺では、心を病んだ人が鬼子母神堂の広間に座って手を合わせ、太鼓の拍子に合わせて南無妙法蓮華経を声高く唱えた。修法は寺の中の院坊で行われ、滝が無いかわりに井戸水を日に一度頭から注いだ。一九一七年には鬼子母神堂の裏の丘に中山療養院が建ち、加持祈禱と医学の療法を併せた治療が行われた。療養院はのちに中山脳病院、中山病院と名を改めて続いた。この寺を調べた三宅鉱一は、静かで奥深い環境とあいまって新しい試みだと評価している。
原典より
千葉県の正中山法華経寺(日蓮宗)では、鬼子母神利堂の広間に坐り、合掌して太鼓に合わせて大声で南無妙法蓮華経と唱える。—— 幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年))
『幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶』は、川村邦光が近代日本の民衆の心性をたどった論考で、あとがきは一九八九年十二月の日付である。明治の「血税一揆」の流言、トラホームと〈迷信〉、狐憑きと精神医学、「脳病」「神経病」、座敷牢と精神病者監護法、芦原将軍の誇大妄想と出口なおの神がかり、祖先教と靖国による霊魂の管理を、新聞記事や民話、医学書、調査報告から読み解く。はじめにの後に三部と終章を置き、あとがきで結ぶ。