子狐を食った家に通う親狐の音
どんな伝承か
明治三十年ごろの話。草加一丁目のある家の蔵に、狐の親子が棲みついていた。あるとき親狐の留守に、その家のおばあさんが近所の者と一緒に子狐を捕まえ、狐汁にして食べてしまった。それからというもの、家じゅうが寝静まるころになると親狐がやって来て、箒で雨戸を掃くようなサーサ、サーサという音を立てるので、家の者は眠れない夜が続いた。おばあさんが、子狐を殺したのは前の家のおじいさんだと大声で叫んでも、親狐は来るのをやめない。のちにおばあさんが神明町の親戚の祝いに呼ばれた帰り道、通い慣れた道を迷ってぐるぐる歩き、疲れて休んだすきに、もらった料理の包みを取られてしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
草加市史 民俗編――伝説(草加市(編)・草加市史)
『草加市史 民俗編――伝説』は、草加市史民俗編のうち「二 伝説」の章である。地名起源・塚・神々・地蔵・薬師・観音・その他の神仏・旅の僧・動物と妖怪の九節で、柿木や青柳の地名の由来、毛長神社の御神体、疣地蔵や火あぶり地蔵、雨乞いの龍、むじな大尽などを、『新編武蔵風土記稿』や縁起碑、土地の伝えによって記す。第十節「世間話」は狐・むじな・狸・雷獣の聞き書きを集め、話ごとに町名と話者の頭文字・生年を添える。