麦の芽を目印に逃れた鬼の嫁
どんな伝承か
ある所におじいさんとおばあさんがいて、娘が三人あった。鬼どんが出て来ていたずらをするので、おじいさんが大きい娘に「いやでも鬼どんの所へ嫁にいっとくれ」と言ったが、娘は「いやでござる」と断った。二番目の娘も同じように断った。三番目の娘は、自分も鬼どんの嫁になるのは嫌だがおじいさんが困るから行くと言い、その代わり麦を一升くれと頼み、麦をもらってまきながら行った。正月が来て家へ客に来るとき、麦が生えているのをしるしに家へ来た。鬼である旦那も一緒に客に来たが、家の中で「福は内、福は内、鬼は外」と言われたので、鬼は家へ入らずに帰った。それで娘は無事に助かり、親孝行をしたという。
原典より
すると、家の中で、「福は内、福は内、鬼は外」、そういうふうにいわれたので、鬼は家へ入らないで帰ったって。—— 高山村の民俗――昔話(群馬県民俗調査報告書 第21集・群馬県民俗調査報告書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高山村の民俗――昔話(群馬県民俗調査報告書 第21集・群馬県民俗調査報告書)
『高山村の民俗――昔話』は、群馬県民俗調査報告書の第二十一集から、年中行事の末尾と「口頭伝承」の部を収めたものである。口頭伝承は昔話・伝説・世間話の三つに分け、桃太郎・蛇婿入り・食わずの女房などの昔話、弘法の投筆や椀貸の渕・小太郎渕の伝説、怪力の馬之丞やアズキトギ・見越シ入道・かくしばあさんの世間話を載せる。各話の末尾には、中山字原・尻高字熊野・北之谷などの採録地と話者を添える。