石ヶ戸の流れから覗く川坊主
どんな伝承か
昭和五十二年七月、青森市浦町奥野に住む山岳写真家の和田陽太郎が、初夏の奥入瀬を歩き、石ヶ戸付近の渓流美をカラーで撮った。出来上がった写真を見ると、ほとばしる流れの中から黒い顔がにゅうっと横向きに突き出ていた。頭は禿げ、大きな目玉が光り、鼻の穴と顎にはひげが生えている。この一帯は、その昔、鬼神のお松が旅人を殺して食べたと言い伝えられる場所である。著者は、当時の川怨霊が今なお生き続けているのだろうか、川坊主と名づけてよい亡霊かもしれない、と記している。
原典より
場所・奥入瀬渓流の石ヶ戸付近昭和五十二年七月、青森市浦町奥野、和田陽太郎氏撮影。—— お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年))
『お化けと幽霊』は、大高興が昭和五十三年に青森市の北の街社から出した、お化けと幽霊と心霊現象の解説書である。仮死からの蘇生や霊魂論に始まり、青森県内を中心とする心霊写真の実例、こっくりさんなどの霊界通信法、著者や知人が語る幽霊の体験談、江戸時代の『北越奇談』を著者が現代文に訳した天狗や鎌鼬の話を収める。問答の形でお化けを語る節、幽霊の存否論・分類・人相学、心理学者による心霊現象の否定を経て、巻末に心霊用語の解説を付す。