裙本隊長の霊魂が病母に一時乗り移る
どんな伝承か
戦死した夫の霊を青森で手厚く供養して帰った裙本芳枝から、数日後に礼状が届いた。寝たきりの九十歳になる姑に青森での様子を話すと、姑の顔がにわかに青ざめ、ベッドから起き上がって生前の息子そのままの歩き方で隣の部屋へ行った。あぐらをかいて水を求め、さもうまそうに飲むと、芳枝と長男の名を呼んで、おかげで帰って来た、祖母と母を大事にしてくれと繰り返し、部下の居る青森へまた帰ると言ったとたん、顔色は元に戻ったという。二年後に再び供養に来た芳枝は、夫の霊が自分と一緒に故郷へ帰り、母に一時乗り移ったらしいと語った。
原典より
昭和五十二年夏、再度、供養のため青森市にやって来た裙本さんの話によりますと、一昨年、夫の霊魂は、私と一緒に故郷に帰り、病気の母に一時乗り移ったらしい、とのことでありました。—— お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年))
『お化けと幽霊』は、大高興が昭和五十三年に青森市の北の街社から出した、お化けと幽霊と心霊現象の解説書である。仮死からの蘇生や霊魂論に始まり、青森県内を中心とする心霊写真の実例、こっくりさんなどの霊界通信法、著者や知人が語る幽霊の体験談、江戸時代の『北越奇談』を著者が現代文に訳した天狗や鎌鼬の話を収める。問答の形でお化けを語る節、幽霊の存否論・分類・人相学、心理学者による心霊現象の否定を経て、巻末に心霊用語の解説を付す。