菜の花畑の飛行場跡に燃えた鬼火
どんな伝承か
鳥浜トメが石原慎太郎に語った、終戦後の知覧での体験。町から隊員が去ったあるたそがれ時、隣の集落へ用事に出かけ、かつて出撃する若者を柵の外から手を合わせて見送った飛行場の柵沿いの道を久しぶりに通りかかった。一面の菜の花畑になった飛行場の跡、兵舎があったあたりに、長く一列に数え切れない鬼火が燃え上がり、激しく揺れていた。連れの宿の女中とともにしゃがみ込んで懸命に拝むと、鬼火は一つずつ揺らいで消えていった。恐ろしいがとても美しい眺めだったと彼女は語った。
原典より
暫くするとその祈りが届いたように、無数の鬼火は一つずつゆらいで消えていったという。—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。