ポプラの根元に燃えた鬼火
どんな伝承か
ある夜、何の気なしにガラス窓の外を見ると、雪に覆われたポプラの木の根元に、鬼火のようなものがぼんやりと浮かぶように力なく燃えていた。思わずアッと叫んで目をおおい、しばらくして見直すと何も見えない。風もない静かな夜であった。それでも目に焼きついた光が離れず、恐ろしさに一夜を明かした。翌日そのことを同僚に話すと、不思議にも幽霊問答のあった夜からちょうど一周年に当たっていた。霊が成仏の礼に来たのであろうと同僚は言ったという。
原典より
翌日……に話すと不思議にも、幽靈問答の其夜が……一周年に當つてゐた。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。