修験者の蝦蟇透視体験
どんな伝承か
飯能の山中で荒行をしていた老修験者が、音の主を透視で言い当てた話。昭和二十二年の早春、遠くから聞こえる正体不明の声に精神を集中して自己催眠に入ると、ほの白い光の中に大きな蝦蟇が一匹、ありありと浮かんだ。確かめようと小屋を出て、蔦につかまりながら険しい崖道を谷底まで下ると、声ははっきり近くに聞こえた。杉と老松の木立のそばに澄んだ水の溜まりがあり、そこに浮かんで喉をふくらませ鳴いていたのは、幻に見たのと形も皮の色も同じ蝦蟇だった。著者は、秩父の山里で育った修験者の幼いころの記憶がよみがえったものと説いている。
原典より
さて其時に、ほんの一瞬、修験者はぼーっとした光の中に一匹の蝦墓がいるのを幻視した。—— 心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年))
『心霊の神秘』は、武久勇三が一九四八年晩秋に序を書き、昭和二十四年に善隣出版社から千部限定で出した心霊現象の解説書である。近親の死に際して現れた幽霊や夢知らせなどの実例を、戦時中の出来事や知人から聞いた話、外国の研究記事から集め、頭脳の霊波による精神感応として説明を加える。話の人名はすべて仮名とことわる。後半の「第三篇 超心理学」では透視術・夢の原理・催眠術・読心術を説き、終わりに戦死の知らせの話と生命論を置く。