円融寺の縁日に出た娘軽業の美人局
どんな伝承か
碑文谷の円融寺の門前は縁日で賑わい、赤松の並木の下には見世物や軽業の小屋が並んでいた。娘軽業の小屋では、木戸口の男が、太夫は旗本の娘で訳あって世を忍ぶ仮の芸人、綱渡りだけでなく渋川流の柔術の立ち合いもできると呼び込んでいる。三文の木戸銭を払って入った伝八郎は、高島田に振袖の太夫が一丈の高さの綱を蛇の目傘と高足駄で渡り、ひらりと飛び下りて笑うのを見て、すっかり見とれてしまう。だがこの一座は、美しい太夫を客に立ち合わせて誘い込み、近くの荒寺で美人局を仕組む一味だった。太夫を尾けた伝八郎は墓地で待ち伏せに遭い、袋叩きにされて刀まで奪われる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が書いた怪談・奇談の短編集である。著者が「私の村」と呼ぶ土佐の海村の迷信を語る「鷲」のほか、高岡郡や長岡郡、野根山など土佐の話を多く含み、越中の放生津や立山、銚子の利根川口、京の寺町、摂津の味泥、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の妖術を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人や土地の人から聞いた話として語る篇もある。