巫女に心を読まれる
どんな伝承か
巫女の老婆と甲斐駒ヶ岳を下る途中、著者が小石を一つ蹴ると、老婆は振り向きもせずに、山を歩きながら家のことを考えるとつまずくよと言った。著者はちょうど、母が今ごろ何をしているかと考えていたところで、ぎくりとした。続いて老婆が生まれ年を聞くので、著者が何気なく戌年だと答えると、老婆は立ち止まってにらみ、なぜ本当のことを言わない、あんたは亥年だろうと言った。知っているなら聞かなくてもよいではないかと内心むくれると、またそういうことを考えると叱られ、著者はすっかり降参したという。
原典より
ちょうど石をけったとき、今ごろウチでオフクロはなにをしてるかな、と考えていた。—— 続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年))
『続 山だ原始人だ幽霊だ』は、西丸震哉の随筆集で、あとがきの日付は昭和四十七年三月十日である。出版の都合で前後編に分けたうちの後編にあたり、ニューギニアやニューブリテン島、トロブリアンド島の部族を訪ねた探訪記と原始社会の食生活論に続いて、幽霊についての自説と、自身や身内が出会った怪談を収める。終わりには手相、テレパシー、呪い殺し、雨やみの術、インドから自宅へ魂を飛ばす実験の話が並び、カバーと挿絵も著者が描いたとあとがきにある。