カラステングがタコを食う
どんな伝承か
初冬の甲斐駒ヶ岳で、著者は五丈小屋に居合わせた白衣の巫女婆さんと、嵐の明けた日に連れ立って下山した。婆さんは道ばたの石碑を一つ残らず拝み、刀利天の碑では、烏天狗が里宮まで送ってくれるそうだと言い、配給所には今日タコとイワシしか来ないから神様にタコを供えると約束したと語った。著者の心の中を次々に言い当て、干支のうそも見抜いた。里宮でもてなしを受けたあと、バス終点の配給所の黒板を見ると、本当にタコとイワシと書かれていたという。
原典より
店先に黒板がぶら下がっていて、「本日の配給」とある横に、「タコ、イワシ」と書いてあるのを見て私は目をむいた。—— 山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊と雑誌の一篇「ワシは安禄山」を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。「自然界はもちつもたれつ」「酒」「山」「兄との交信」の四部に、チョウや小動物、山や湿原の探検、酒と温泉の話とともに、横尾谷の岩小屋の幽霊、釜石の幽霊、木曾御岳の人魂、呪い殺しの実験、雨やみの術など著者自身の怪異体験をつづる。あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。