小田急沿いの家へ飛ばした魂
どんな伝承か
語り手が怪談めいた話をすると、研究所の女子研究員はそんな馬鹿なことは絶対に信じないと言い切った。そこで今夜きみの家へ魂を飛ばし、確証を置いてくると請け合った。その夜、寝床の上に座り、地理に暗いので代々木駅を出発点にして道筋を思い描いていく。郊外の方へ進み路地を右へ曲がると、前にガードが現れ、土堤の下に畠が広がったところで思考が途切れた。翌日尋ねると、それは小田急のガードで、家は畠の前を左へ折れた右側だという。二晩目はまっすぐ彼女の部屋へ入った気持ちになり、腎臓よ張り切れと三十分念じ続けた。翌日、彼女は夜中に七、八回も便所へ立ったと不思議がった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年))
『続 山だ原始人だ幽霊だ』は、西丸震哉の随筆集で、あとがきの日付は昭和四十七年三月十日である。出版の都合で前後編に分けたうちの後編にあたり、ニューギニアやニューブリテン島、トロブリアンド島の部族を訪ねた探訪記と原始社会の食生活論に続いて、幽霊についての自説と、自身や身内が出会った怪談を収める。終わりには手相、テレパシー、呪い殺し、雨やみの術、インドから自宅へ魂を飛ばす実験の話が並び、カバーと挿絵も著者が描いたとあとがきにある。