火事を知らせた普光観智国師像
どんな伝承か
与野の長伝寺で、ある晩早く床に就いた和尚は、その日葬式を出した家に残された幼い三人の子の行く末を案じて寝つけずにいた。そこへ奥の部屋からカタンコトンと異様な音がする。また泥棒かと思い、小僧を起こして明かりをつけ、わざと大きく咳払いをしたが、音はかえって高まった。二人で音をたどると、やはり開山の普光観智国師像を納めた厨子からで、前まで来ると音はぴたりとやんだ。寺の中にも異状はなく、寝直そうとしたとき、台所で火の手が上がった。早く気づいたので大事に至らず、その後も寺に災難が迫るたび、国師像が音を立てて知らせたという。
原典より
そして、これからあとも長伝寺に何か災難が降りかかりそうな時には、いつもこの開山様の尊像が不思議な音を立てて知らせてくださったということです。—— 与野市史 民俗編――伝説・昔話(与野市(編)・与野市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
与野市史 民俗編――伝説・昔話(与野市(編)・与野市史)
『与野市史 民俗編――伝説・昔話』は、与野市史の民俗編から「一〇 伝説・昔話」の章だけを収めたものである。武蔵国足立郡与野にまつわる伝説と昔話二十話を、疫神や弘法大師、源頼義の伝えから、お化け地蔵・一つ目大入道・天狗隠し・猫橋のいわれなどの怪異譚まで、おおむね時代順に並べる。十五話は岡安茂生編『与野の伝説』に、ほかは『埼玉県伝説集成』『大宮市史』に拠り、再調査して題名や内容を書き改め、多くの話の末に注を付す。