天狗火(秋葉の魔火)
どんな伝承か
遠江の山の上では、夜になるとときどき火がともり、ふらふらと移ろい歩くことがあった。土地の者は天狗の遊び火と呼び、雨の夜には火が川へ下りて水面を漂うので、天狗が川狩に出たといってひどく忌み、家々で灯をともしたという。根岸守信は、御用でその地へ行った者や、召し使っていた遠州生まれの者からも同じ話を聞いたと書き留め、正体は分からないとした。小泉丹は、土地の人が信じ、よそから来た人も見ている以上かなり確かな現象だが、実体は想像もつかないと述べている。
原典より
天狗の遊び火とて遠州の山上には夜に入り候へば時々火燃えて遊行なす事あり。—— 科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。